「三十路いってるかねえ」
「三十路って言わないで。30代って言って」
「指輪は?してないの?」
「わからない…」
先生がゴム手袋をとる瞬間を頭に思い浮かべてみたけど、指輪があるかどうかの答えはでてこなかった。
そんなこと、気を付けて見たことがなかったし。
それに診察中に指輪をつけたままなんてことあるのだろうか。
普通、はずすよね?
「聞いてみたら?彼女いるんですかって」
「聞けるか!それ、好きですって言ってるようなものじゃない?」
近くにあったクッションを衝動的に掴み取り、胸にぎゅうと抱き寄せた。
冬実は首を振るわたしをあきれたように見ている。
「そういう意味も込めてよ。好きですというアピールからが始まりよ!」
「無理だよー。恥ずかしいもの」
テーブルに顔を臥せる。
考えるだけで恥ずかしい。
わたしが先生のことを好きだと気づかれたら。
好きだと気づかれている状態で診てもらうなんて。
それに先生に彼女や奥さんがいたら。
わたし、ばかみたいじゃない?



