「嘘だよ」
席を立ちかけたわたしは、思いっきり眉を顰めた。
嘘?
嘘なの?
どうしてそんな嘘をついたりするの?
わたしの抗議の視線を浴びながら、わたしとは正反対の穏やかな顔で松居先生は首を少し傾げた。
「やっぱり、幸宏に会うのはコワイ?」
「コワイとか、そういうのじゃなくて…、会いたくないんです」
撤回。
素敵なお兄様だと思ったのは何かの間違い。
わたしをからかっているとしか思えない。
こうしてわたしを呼びだしたのも、ただの憂さ晴らしだったってわけ?
「だけどさ、君がやってることも同じことだと思わない?」
松居先生は、フォークの先をわたしに向けてきた。
「的井先生に恋遊び。自分が恋できないのがつらいからって、的井先生を利用しているんだろ?」



