恋の扉をこじあけろ


「毎日やってれば鍛えられるだろうから、きちんとやるように。これが宿題」


「はい」


宿題という言葉にうんざりしつつもマスクをはずした先生の笑顔にとろける。


次回の予約をとって診察台から足を下ろしたとき。


「あれ…?」


廊下を挟んだ向かい側にあるブースを見て、首を傾げた。


そこには前にわたしの歯を磨いた実習生がいて、憧れの眼差しを先生に向けていた。

だけどわたしが気になったのは実習生ではなく、実習生が見つめている先生だった。


ちょっとだけ見える先生の横顏、どこかで見たことがあるような……


「どうかした?」


後ろを振り返ったきり固まってしまったわたしに、的井先生が不思議そうな顔をしていた。


「あ、いえ。なんでもないです」


慌てて先生に向き直り、今日のお礼を言って診察室を出た。



宿題、忘れないようにしなきゃなぁ…


つい漏らしたため息に、四歩前を歩いていたおばさんが振り返った。