にんじん【超短編】

私はあの日以来
にんじんを食べるようになった
今、社会人の私には好き嫌いはない


「ねぇ?何で玉ねぎ食べないのよ。何でも食べる人じゃなかったの?」


私の部屋で当然の様に、私の作ったカレーライスを食べる人


あの時のクラスの人気者は
何年かの月日を経て
今は私の彼となっていた


「バカだなぁ、あん時はお前の事を何とかしたくてそう言ったんだろ」


と彼


実際、彼のお陰であれから少しずつ
みんなの態度が変わった


ギクシャクしていた友達とも
和解して、また仲良くなれた
つい、この前も結婚式に出席した所だ
次はあんたの番だねって言ってたけど…


「ねぇ、ホントに玉ねぎ食べないんだったら
この前の返事ノーだからね」


「マジで?何で玉ねぎでプロポーズ断られなきゃなんないんだよ~」


大袈裟に言いながら
玉ねぎを食べていく彼


もう、あの頃の私とは違う
お皿の横に弾き出されていた
あの頃とは…


私はにんじんが大好きだ








『にんじん』