『…名前?何でだよ、お前が女の名前聞くなんて珍しいじゃん』 訝しげにそう言う兄貴に、一瞬ヒヤリとしたが、 『いや、兄貴をフッた女の名前くらい弟として知っておきたいしさ』 『…ま、いいけど?…名前は…』 未だに兄貴は、オレを怪しんでいる様子。 でも、 名前はちゃんと聞き出せた。 “桜庭優芽” 兄貴は、その女の名前を呼ぶとき、柔らかい笑みを溢した。 …兄貴、本気でその女が… ――桜庭優芽…ぜってー兄貴をフッたこと後悔させてやる。 オレは、そう決心していた。