『奈々ちゃん?マジ、どうかした?』 溝口が少し真面目な顔でそう尋ねてくる。 …溝口のこういうところが私は好きだ。 いつもおちゃらけて、ヘラヘラした顔しか見せないくせに、一番周りの変化に敏感なんだ。 『…なんでもないよ、ちょっと考え事してただけ』 私は、溝口に心配かけないようにポツリとそう呟きながら視線を窓から溝口へと移した。