「兄貴!」
「…え?兄貴…?」
私が天ケ瀬くんの手を握ったまんまで後ろを振り向くと、男の人がお腹を抱えて笑っていた。
「…ぶふ、いいじゃん陽向、その子、採用してあげようよ!」
「…ホントですか!?」
その人に向かって言うと、男の人はニコニコ笑って、私に近づいてきた。
「…ふふ、面白い子ー♪なになに、陽向の彼女?」
ふわふわした笑みを浮かべながら男の人が私と天ケ瀬くんの手元を見る。
「…わゎ、天ケ瀬くん、ごめんなさい!」
私が慌てて手を離すと、天ケ瀬くんはうんざりしたように私と男の人を見た。
「…兄貴、本気?」
「ふふ、お兄様の権限で採用しちゃいます、陽向には拒否権はありません!」
男の人が天ケ瀬くんに言うと、天ケ瀬くんが大げさにため息をついた。
「…分かったよ、もうなんも言わない。」
天ケ瀬くんがチラリとこっちを見てから、男の人にそう告げる。
「…てことで、よろしくね?後で説明とかしたいから、もう少しお友達と待っててくれるかな?お客さんまだまだいるし…。ごめんね?」
男の人は笑顔で私に言う。
「はい!」
「ん、いい返事。じゃあまた後でね。」
男の人は満足そうに笑って、他のお客さんのオーダーを取りにいってしまった…──。

