「あ…それ、新しいソルベ?」
見慣れない色合いのソルベに、私は思わず訊ねてしまう。
確か、店先のソルベのケースにも、千尋くんの目の前にあるソルベはなかったはず…。
こくり、と千尋くんは頷く。
「もうそろそろ、ソルベが売れる時期だから、新商品、と思って…。でも、ちょっと子どもっぽい…かな?」
じっと、手元のソルベを見ながら、千尋くんは言葉を紡ぐ。
千尋くんの手元には…
スカイブルーの色のソルベに、シャーベットカラーの粒が散らばっていた。
私はそれを近くで見たくてソルベに近づく。
「わぁ、可愛いっ!」
私は思わず声をあげてしまった。
青のソルベに散らばっているのは、淡い、優しい色をした星屑のような粒。
「これ、ラムネから作ったんだけど、ちょっと幼いかな。…七夕とか、夏の大三角とか、夏っぽいかなって思って…。でも、Amagaseに来るお客さんの年齢層には、合わない気もして。…迷ってる。」
千尋くんの話を聞きながら、私はクスリと笑ってしまった。
千尋くんが不思議そうな、不安げな表情を浮かべるから、私は慌てて弁解した。
「あっ、ごめんね、私、実は、千尋くんのこと、無口なひとだと思ってて…。でも、ソルベのことになると、ほんとに真剣に言葉を発するから、なんだか微笑ましいような、嬉しいような気持ちになっちゃって、だから…。」
表情を変えない千尋くん。
だけど…
千尋くんの耳元は、ほんのり赤くなっていた。
…陽向の言う通りだ。
全然、怖くないし冷たくなんかない。
きっと、千尋くんは良い子だ。
「…味見、してくれない?」
ぽつり、と、千尋くんが言う。
嬉しくなって、私は大きく頷く。
「ぜひとも!私、お客さんの時から、ここのソルベ、大好きなの!」
私の言葉に、千尋くんは…
微かに笑った。
一瞬の笑顔に、私はちょっとだけ、戸惑ってしまう。
私より、年下なのに。
その微笑みは、ずっと、大人っぽく映った。
「…はい。」
千尋くんが、試作のソルベをスプーンですくってくれる。
…のは良いんだけど、そのスプーンは私の手を通り越して、口元まで運ばれた。
「え、え…」
戸惑いを隠せないでいると、千尋くんはまた、首をかしげた。
これは、巷で言うあーん、てヤツだよね!?
わわわ、恐るべし無自覚…!!
そんな綺麗な顔で、綺麗な手であーんなんてされたら、お姉さん心臓持たないよ…!!
心の声と共に葛藤を繰り広げていると、千尋くんは、遠慮なくスプーンを近付けてくる。
…無自覚の天然が、一番罪だよーっ!
そんな心の叫びと一緒に覚悟を決めて、私はスプーンを口に含んだ。

