Sweet.Ⅱ
甘い時間を召し上がれ♪
1.甘いものには裏がある…?
「私は山葡萄のジェラートで!」
「私は、えっと、迷うーっ…」
バイトとして雇ってもらって一週間。
カラフルなスイーツが並んだショーケースの前で、お客さんが連れあって何をオーダーするか迷っている。
「ゆっくりお考え下さって大丈夫ですよ。」
そんなお客さんに、陽向はにっこりと笑って接客する。
…さすがだ。
私はというと、さっきから隣に立つ陽向を横目で見ながら、感心するしかない。
陽向のかっこよさも相まって、女性のお客さんは嬉々としながらお会計をして行く。
…ほんとに、ここで私が役に立つ日は来るんだろうか。
そう思ってしまうくらい、陽向の接客にはソツがない。
「おい、なにつっ立ってんだよ。」
ボーッとそんなことを考えていると、接客を終えた陽向に横から小突かれた。
「だって、陽向の接客に私必要ないじゃんかー…。」
私がふてくされながら言うと、あきれ顔で陽向がため息をつく。
「お前は馬鹿か。俺の見て、ホールスタッフの仕事を覚えんだよ。…この店、新人研修に人手を割くほど暇じゃねぇんだから。」
「…う、ごめんなさい…。」
もっともな陽向の意見に、私は肩をすくめるしかない…。