「ほらほらー、みんな自己紹介っ!陽向も愛想悪いぞ!」
雪人さんが唇を尖らせながら天ヶ瀬くんをつつく。
「…よろしく、天ヶ瀬陽向。雇う以上は容赦はしねぇかんな、覚悟してろよ。」
天ヶ瀬くんが挑むように私を見る。
「が、頑張ります!」
ちょっと怖いけど、私だって雇ってもらう以上は生半可な気持ちではしたくない。
怯みそうになるのをこらえて、真っ直ぐに天ヶ瀬くんを見据えて言った。
「…ふん。」
私の言葉を聞いた天ヶ瀬くんは、気のせいか、微かに口角を上げた。
「天ヶ瀬く…、」
その表情に少しびっくりして天ヶ瀬くんの名前を呼ぶと、天ヶ瀬くんが私の言葉を遮る。
「ここにいるの、みんな『天ヶ瀬』だから、俺のことは陽向で良い。」
天ヶ瀬くんがそっぽを向いたまま言う。
…陽向くんの表情は上手く読み取れなかったけれど、その耳は心なしかほんのり赤く染まっている気がした。
「…天ヶ瀬藍だ。」
藍さんはそれだけ言うと、キッチンの方に戻ってしまった。
「天ヶ瀬千尋。…グラシエ。」
藍さんの背中を見送っていると、突如自己紹介が始まって、私は慌てて姿勢を正す。
「千尋もあんずちゃんより年下だから。今は高校生なんだ。ね、千尋。」
雪人さんが補うように言葉を続ける。
雪人さんの言葉に、千尋君がこくりと黙ったまま頷いた。
「…待って、陽向くん、みんな『天ヶ瀬』って…」
一通りの自己紹介を聞き終えて、私はふと陽向くんの言葉を思い出す。
「あー、そう、5人兄弟なんだ。」
雪人さんがにこにこしたまま私にそう告げた。

