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「産みの…親…?」

突然言われた言葉に、暫く反応が出来ませんでした。

「…産みのってことは、キミが、ボクの「おかあさん」……?」

目の前に座る女性、《遠藤 乃愛》さんは頷くと、うれしそうにボクを見詰めます。

「えぇ…。……貴女と離れて、もう何年になるのかしら…。あの頃のわたしは、貴女を産むことで自分の立場が明確になってしまう気がして、…自分の大切なものを捨てて、逃げたのよね…」

「……逃げた…?」

何処か悲しい響きの言葉に、首を傾げます。すると《遠藤 乃愛》さんは悲し気に微笑みました。

「…そう、逃げたの。……「大罪人」の生まれ変わりと言われ、「大罪人」の子どもを産み落としたわたしは、「大罪人」と同じ名前を付けられ、「遠藤」そして「エトワール」の歴史から抹消された」

「そして、その重圧に堪えることが出来ず麗亜や俺を見捨てた」

「…悪いとは、思っているわ…。……何度、我が子に会いたいと願ったか…貴男に分かる…っ?!」

泣きそうな声で《遠藤 乃愛》さんは言うと、小さく溜め息を吐いて続けます。

「本当は、貴方達を見捨てるつもりなんてなかったの。…自分のお腹を痛めて産んだのだもの、当然でしょう」

「っ…だったら何故!!」

《遠藤 乃愛》さんの頬に一筋の、透明な線が流れました。それが涙だと気付くのに大した時間は掛かりませんでした。

「…「遠藤」の「エトワール」にある【掟】。『「大罪人」の産み落とした赤子は3日のうち間引(マビ)くべし』……本来なら、3日のうちに間引かなければならなかった貴女を、お婆様は情けをかけて下さったの」

いきなりに沢山のことを言われて、上手く頭が回らないボクに顔を向ける《遠藤 乃愛》さん。彼女の目はとても真剣で、少なくとも今の話が嘘じゃないことは分かりました。

「…ん…と、よくわからないんだけど……キミはボクの「おかあさん」で、ほんとならボクは生まれたその日に死んでたはず……なんだよね?」

取り敢えずわかったことだけを言うと、ルイさんが此方を向きます。

「…彼女は、君の本当の母親だよ。それは俺が保証する。……それと、これは俺…というか俺達に関係することなんだけど……」

言いにくそうに言葉を切りながらルイさんは続けます。

「何?ボク、何を聞いても驚かないよ?」

いきなりよくわからないことを言われて混乱していますが、必死に言うルイさんを見て自然にそう答えていました。


「…ありがとう。けど、無理な時は聞かなくていいからね」


気遣うように言われ、軽く頷きます。


「…実は、俺と麗奈……麗亜ちゃんは……」




その言葉を聞いた時の、「おかあさん」の顔をボクは見ていませんでした。






「この世界でも『if』世界でも、双子の兄弟だったんだよ」