「まじで本当にお願いしますよ!」
次郎は霧吹が頭に被っていた唐草模様のてぬぐいをひっぺがした。
「こんなもんまで! これじゃ泥棒じゃないっすか! ヤクザですよ! ヤクザ! 泥棒とヤクザじゃそのフィールドが違うんですから」
四郎は聞かぬふりをして、自分の仕事に集中していた。
彼の仕事は監視だ。
家中の監視カメラの画像を一日中確認するのがその役目だ。それ以外のことには全く関心を示さない。自分の仕事にしか興味がない。
霧吹はジャージのチャックを下ろし、リラックスしはじめ、ヤニ! と、ジェスチャーをしてタバコを要求した。
「次郎、それでよ、なんだこの胸のもやもやは」
ソファーにふんぞり返って、受け取ったタバコの箱をテーブルにコンコンと打ち付けた。
「やはり。それはきっと若が葵さんのことが気になっている証拠だと思います」
「だよなあ」
「でも若、葵さんのほうはどう思ってるんすかね」
え? と目を猫のようにまん丸くした霧吹の頭の中にその考えはなかった。
自分中心に世界が回っていると思っている。
従って、人の気持ちなんぞどうでもよいというところだ。
自分が好き=相手も好き。
この方程式だけしか霧吹の頭の中には入っていない。

