「これはきっとわ」
「そこまで言うんじゃねー!」
ゴツンと四郎の頭を殴る次郎の視線はモニターに釘つけになっている。
「俺が行って来る。画面は切り替えろ」
次郎はすぐさま監視室を出て、そこへと走り出した。
四郎は言われた通りに画面を切り替えて、小さいモニターに例のモノを映し出すことにした。
なにも知らない霧吹は葵の部屋の襖に手をかけ、静かに戸を、
「若っ!」
霧吹はそのウィスパーボイスに飛び上がった。
それはまさしくびっくりした猫が毛を逆立てて飛ぶ様によく似ていた。
「何やってんすか! 勘弁してくださいよ!」
「お前こそ何やってんだよ」
こそこそ話す声はその怖い風貌には全くもってにつかわしくない。
「ここ葵さんのとこじゃないっすか!」
葵の部屋を指さしながら力強く振る。
「あ? そうか? そうだったのか? 俺としたことが、俺の部屋と間違えたっぽいな」
ペシリと自分の額を手で打ってごまかす霧吹の態度を冷ややかに見守る次郎はなにも言葉を発しない。
一通りの苦しい言い訳が終わったのを見計らって、霧吹を強引に監視室まで引き戻した。

