霧吹は唐草模様の手ぬぐいを頭に被り、顎の下で固結びにしていた。
真っ黒いジャージに黒い靴下で自宅の廊下を腰を落として前進中。
目的地は葵の部屋だ。
誰もいるはずがない長い廊下を足音を立てずにこそこそと歩く姿は、さしずめ、こそ泥ってところか。
「次郎さん、すいません」
舎弟の一人、小柄で華奢なめがね小僧の四郎が、監視室で横になってオンラインゲームに夢中の次郎を呼んだ。
『すとっぷ』を押し、「なんだよ」と四郎を睨む。
呼ばれただけでその人を睨むなんて、なんて失礼なことか。
「ちょっと確認してもらいたい画がありまして」
四郎は50インチの一番でかいモニターにその画を映し出した。
「な、なんだこれは」
次郎はその画を見てソファーから転げ落ち、言葉を失った。

