カギをしっかりかけて、念のため一回ドアが閉まっているかを確認した名前を知らない例の男。
なかなか神経質な奴なのか? そして用心深いのか?
三郎は完全に奴の気配が消えたのを確認するとクローゼットから出て、シャカシャカジャージのポッケからガーゼのハンカチを出し、スキンヘッドの頭を軽く拭いた。
張り込みのデカよろしくすぐさまカーテンの隙間から外を覗うと、例の男が去っていく後ろ姿が目に入った。
「クソが!」
罵声だけしか頭に入っていない三郎は、例の男の後ろ姿が見えなくなるまで、カーテンの隙間からその背中を睨み続けていた。
霧吹に連絡することを思い出した三郎は、そこでやっとベッドに置かれたメモのことを思い出し、紙っぺらを手に取ると、
「おいマジかよ」
メモを読んだ三郎は体中の毛穴から汗が噴き出した。
あのクソ野郎。なめたことしやがって。
怒りに満ちた顔は真っ赤になり、それは茹でダコのようだ。
メモをグシャッと握り潰す。
怒り震える体をこらえることしか出来ない自分にもどかしさを感じながら、携帯の『若』へ連絡することを優先した。

