しばらくそうして隠れていると、部屋のカギがかちゃかちゃと回される音がした。
来たな。三郎は黄色い歯を見せて笑み握り拳に力を入れた。
カギを開け、少しの間部屋の中に神経を送り込む外にいる変な奴。
聞こえるべきはずの葵の声や物音が聞こえないことを不思議に感じたのか、一度ドアを閉めて玄関先でごそごそした。
と、そこでまた葵のiPhoneが振動した。
ベッドサイドに置きっぱなしのそれは、いない主にメールが来たことをかたくなにお知らせしていた。
部屋のドアが開き、今度は躊躇無くまだ見ぬその男が入って来た。
靴を脱ぎ、しっかりと揃え、部屋の中へ入り電話を確認した。
「ああ、そうですか、僕のメールは見ていないのですね」
着信ありましたよランプが点滅している葵のiPhoneを見下ろしている男。
こいつがその例の男か。
三郎はクローゼットの隙間からその男の後ろ姿を確認した。
顔を拝みたいところだが、残念なことにその男はこちらに顔をむける予定は無いようだ。
くそっ!
三郎は心で大きく舌打ちをした。

