三郎は葵の部屋で気ままにのんびりとやっていた。
夜のゴールデンタイムも終わった頃、葵のiPhoneに着信があった。
この数字の羅列はあの男からだ。
しばらくすると留守電に切り替わり、すぐに切れた。
今度はメールだ。
『今から行きますね』
あ? 今から行くだと? どこにだ? ここにか? ここか? そうか?
まずいな。
部屋の電気はつけっぱなしにしろと言われている三郎は、部屋中の電気をつけっぱなしにしていた。
どっかの刑事の張り込みのように、カップラーメン片手にカーテンの隅から外を覗った。
まだ誰もいない。
『部屋のカギは持っていますから大丈夫ですよ』
「おい、何考えてんだこいつは」
三郎は速やかにその辺のものを片付け、電気を消し、消臭スプレーで部屋からカップラーメンのにおいを消し、クローゼットの中に隠れた。
クローゼットの隙間から部屋の中を覗う三郎は、なぜか楽しい気分になっていた。
子供の頃にやったかくれんぼをしている気分になり、鬼が見つけにくるのをひたすらに待つ子供に返っていた。

