「……き、霧吹先生」
満面の笑みを霧吹に向けた。
あ? するどい目つきで教授の目を見る霧吹のセクシーな瞳に教授は一瞬クラっとした。
うずうずしだした体をこらえ、
「せっかくですから、先生も一つ何か学生に話をしませんか?」
上からは、まかり間違っても、この人には一切何も振るなときつく言われていた教授だが、この霧吹の態度には我慢ならなかったらしい。学生の前で恥をかかせてやろうと思い立った。
予定と違うことをした教授にも、霧吹はなんにも動じない。
「そこで、これは生物学の講義ですから、何かそうですねえ、それにふさわしい話でもひとつ、いかがです?」
自分なりにできる最高の笑顔を学生に向けて、同意を求める。
教授に媚びを売るのを得意とする数人の学生が拍手でそれに答え、教授の顔色を覗った。
やめて! お願い! 拍手なんてしないで。この人に何か言わせちゃだめ! 絶対にダメ! よからぬことが起こりそうで怖い!
葵は心の中で神様にお祈りをした。

