輝かしい未来を思う存分に秘めた学生たちの綺麗な瞳は、暗黒にどっぷりと浸かりきっているくすんだ霧吹に注がれていた。
しーんと静まりかえった講堂は、時折響く咳の音しか聞こえない。
「み、みなさん、おはようございます」
とびきりの笑顔を見せて場の空気を自分色にがらりと変えた教授。
霧吹は学生の顔を片っ端から穴の空くように見ていき、不自然な輩がいないかを悠々と確認していた。
その危ない風貌とそれに似合った顔の綺麗さに、数名の女学生が頬をぽっと赤らめたことなど、霧吹には分からなかった。
「えーと、今日は、いつもと違ったアシスタントが、着きます。えー、彼は臨時として入りますので、何かあれば彼が席を回りますから、そのときに質問等をして下さい。私の講義中は一切の私語を……禁止します」
ぴしゃりと言い切った教授に、学生は神経を尖らせ背筋を正して椅子に座り直した。
教授は霧吹に挨拶をするように促し、前に出るように手を差し出された霧吹は、面倒くさそうな顔をすると、よっこらせと重い腰を上げ、
「……そういうことだ」
マイクをくいっと自分の方に向けて言い、大きく頷き、椅子に座り直す。これではどっちが偉いのか、分からない。
ピンク色のスーツに負けず劣らず、教授の顔がピンク色に変化していくのを敏感に感じ取った学生は、何が始まるのかとわくわくした顔つきで二人の次の行動を待っていた。

