時間ぴったりに大講堂に入ってきた教授は、薄いピンク色のスーツを着た、ブタのような、いや、小太りの大人な熟女だった。
金縁めがねの奥に意地悪に光るその小さなつぶらな目は、学生いじめを楽しみにしているようにも見える。
と、その後ろから白いスーツを着た霧吹がのしのしと教授の後を着いてきた。
うっわ! なんで入ってくんのよあの人!
葵は体が硬直するのが分かった。手のひらにうっすら汗をかき、喉がほんの少し乾いてきた。
入り口のドアの横では、黒いスーツをしとやかに身に纏った金髪で短髪の次郎が霧吹を目で追っていた。
次郎の方がボディーガードに見える皮肉を葵はぐっとこらえる。
教授は渋い目で霧吹を見たが、上から何か言われたのだろう、そのまま自分の横に仕方なく置いておいた。
霧吹は黒板の横に置かれていたパイプ椅子を1脚手に取り、教壇の真横に置き、手は相変わらずポッケに突っ込んだまま、足を組んで字のごとく、柄の悪さ満載でどっかりと座った。
ピンクのスーツの豚に似た教授は、口をあんぐり開けたまま突っ立つことしかできなかった。

