「パンツはしまったのかよ」
葵の手首を放し、目を閉じて二度寝に入りそうになる霧吹。
赤くなる葵は手を放されて若干ホッとして、気づかれないように息を吐く。
そんな葵を見てみぬふりをしながら笑いをこらえる霧吹の目には、涙が溜まっていた。
笑いをこらえている証拠だ。
「早くしねーと遅刻するぞ」
「そうだ!」
すっかり忘れていた。
葵は時計をちらっと見た。
まだ余裕はあるし、今日は車で行けるからまだ大丈夫だ。
スーツケースいっぱいに物を詰め込みながら、気になってちらりと霧吹を盗み見する。
寝てる。
「一応、できました!」
ひとまず必要なものは入れたから大丈夫。
2、3日分あればいいよねきっと。
「よし、じゃ行くか」
面倒くさそうにベッドから起きると、のびをひとつして、スーツケースを軽々と持ち上げた。

