霧吹は舌打ちをあからさまにすると、素早く車外へ出て恐る恐るその人物を確認した。
次郎も霧吹の後ろに隠れるように続く。体は車の下に入り込んではいない。ぶつかった衝撃で前方に飛ばされ、横向きで倒れていた。髪は顔にかかり、意識があるのか無いのかは定かじゃないが、指先がぴくりと動くのを目の隅で確認した。
良かった。
倒れているのは、変な色のワンピースを着た女だ。
靴は脱げていないし、バッグもしっかりとチャックが閉められていて、中身は無事だ。
顔に掛かっている髪を後ろに払い、顔を確認した霧吹は、難しい顔をした。
血も出ていないし、いまのところ意識はうっすらある。
再度まわりを確認したが、人っ子一人いなかった。
今ならばっくれられる。
急ブレーキの音でこれから野次馬がわんさか来るだろう。
しかしその前にこいつを拉致れば、証拠隠滅になるし、助かったも同然だ。
女の持ち物を素早く確認したが、身元確認に繋がりそうなものはなかった。
しかし、この女の顔をしっかりと確認した霧吹は、目を見開くほかやりようがなかった。

