「責任って、おまえは俺に何を望むんだよ」
あからさまに面倒くさい声がスピーカー越しにも分かる。
「傷がつきました」
「ああ、そうか。そりゃぁよかったな。傷の一つや二つ、箔がつくってもんだなぁ」
「もう! 霧吹さんとは違うんです!」
「ブチのめされたいか?」
「兎に角」
葵は一回呼吸を整え、深呼吸した。
肋骨にもひびが入っているのか、大きく呼吸ができない。顔を歪めた。
「痛いだろ。無理して話すな」
「一緒にいさせてください。肋骨が痛くて呼吸がちゃんと出来ないのも、体が痛くて動けないのも、こんな気持ちにしたのも、ぜーんぶぜーんぶぜーんぶ霧吹さんのせいです」
「よし分かった。一緒にいてやろう。三日だ。そんだけありゃ回復もすんだろ」
「若っ」
たまらず次郎が声をかけるが、霧吹はそれをニタラ笑顔で差し止めた。
「バカなんですか?」
「おまえ、誰に言った今。今からぶん殴りに行くから、そこで正座して待っとけ」
「ですから、これからも、」
「お前と俺は住む世界が違うし、」「犬山の叔父さんの娘も同然です! 同じようなもんですよね」
美紀子が言ったようなことと同じことを言う葵に、霧吹はじめ舎弟たちも、もしかしたら葵は美紀子サイドのような女になるのかもしれない。
これは、化けるかもしれないな。と、闇夜を切り裂く直感で感じた。
「……」
そう言われると、またも霧吹の心の中に天使霧吹と悪魔霧吹が顔を覗かせた。
「いいじゃねえか、まるっとまとまっちまえよ(悪)」
「ダメです。まずは葵さんの回復を待って、それからお友だちとしてから……(天)」
「しゃらくせい、クソ天使。ちゃっちゃと女にしちゃえやいーんだよっとにトロくせえ(悪)」
「ちゃんと紳士的に振る舞ってください!(天)」
心の中で葛藤すること数秒。

