「仕方ねぇな」
そういうわりに顔には優しい笑顔を乗っける霧吹を横目に、次郎もまた笑顔になる。
霧吹は、自分がハメられたなんてことはつゆ知らず、自分の可愛くよこしまな気持ちを全面に出しても問題無いことを悟ると、すとんと喉につっかかっていた小骨が取れたような感じがした。
なんか、あれだな、たまにはこういう未経験の女もいいもんかもしれないな。と、心臓に居座る子猫に問いかけると、内なる子猫は、『だろ?』と共に悪魔に成り下がるゲスな奴一人と一匹。
自分がいいと思っていたら、相手もいいと思っている。と、思い込む自己中な性格は治ることは無さそうだ。
「じゃ、あれっすね。明日にでも葵さん家の荷物はまとめてまたこっちに持ってきます」
心なしか次郎も嬉しそうだ。
にやつく霧吹はこれから先葵をどう料理しようかと頭の中で得意のAプラン、Bプラン、Cプランまでをシミュレートする。
ぐっすり眠り込んでいる葵は、霧吹の自分に対するよこしまな気持ちと、自分がこれからどうなっていくのかを知ることになるのは目覚めてからのことになるのだが、更に、三回もはねた犯人の霧吹が、自分の夢みていた王子様だったということに度肝を抜かれるのも、
そう先の話ではなかった。

