霧吹の心臓に住み着いている少し成長した子猫が疼き出した。ちょっと爪の生えたお手手で心臓をがりがりする。
『おだまりやがれ!』
一喝するが、成長した子猫は言うことをきかなくなっていた。
いつものあなた野病院はいつものように薬品のかおりがした。
「あー、ぼっちゃんね、この感じは危ないかもしれませんねぇ」
あなたのが胡散臭い診察結果を伝えた。
「どういうことだよ?」
「はねられすぎてますね」
「そりゃ、そうかもしれねーけど、やばいのか?」
「ええ、ええ。この感じだと、ぼっちゃん、責任取らないと行けなくなるやもしれませんねぇ。なんせこんな普通の女の子を傷物にしてしまったんですからねぇ、ええええ、可哀想な葵さん」
「傷物って、そそそそうじゃねーだろうよ」
「三度もはね飛ばしたってことは、あれですよ、きっと、なにか運命のようなものなんでしょうねぇ、ええ、ええ」
「運命? そんなもんがあるかよ、冗談じゃねぇ。俺は今まで自分の手で運命を切り開いてきたんだぞ。その辺に運命が落ちてるわきゃねーだろ」
「いえいえ、ぼっちゃん、同じ人を三回もはねるなんて芸当、そうそう出来るもんじゃぁないでしょう。ええ。これは何かのお導きですよ。ぼっちゃんが切り開いて葵さんを引き寄せたのやもしれませんねぇ。放してはいけないっていうねぇ」
「無理だろう」
「何が無理なもんですか。後遺症が残って訴えられるよりはマシじゃぁないですかねぇ」
「訴えられたらまた箱に戻るのか」
「きっとそうでしょうねえ」
きらっと光る金歯がキラリと見える。
「ま、ちょっと盛っておきますから様子を見てくださいねってことでひとつ、はいはい」
葵はまたも意識を吹っ飛ばしている間に何かを盛られてしまった。
「これで明日のお昼まではぐっすりですから安心してください」
「毎回毎回すんません」
次郎が懐から茶封筒を取り出す。
あなたのは慣れた手つきで受け取り、確認し、大切に金庫に納めた。

