「若」
「こいつは……はねられて笑ってたぞ。なんとおぞましい」
意識を無くした葵の顔は、笑顔で固まっている。
「ぅわ、ほんとっすね、葵さん、そろそろ頭どうにかなっちゃったんじゃないんすか」
「怖いこと言うんじゃねえ」
「すいません」
次郎が渋い顔で葵の顔を覗き込んだ。
「でも葵さん、さすがに3回もはねられたから、頭、おかしくなっちゃったとしか思えないっすよ俺」
「やめろ。って、嘘だろ」
前方にはライトを消して姿を潜める車二台。その中にはあなたのがいたはずだ。
「次郎」
「へい」
次郎は、ヤブ医者に電話連絡する。
「あーもしもし、霧吹ですぅ。
え? あぁ、見てました? そうなんすよ、また葵さんでしてね。ああ、すみません、よろしいでしょうかぁ。はいー、はいはいー……」
「オッケーっす」
「よし」
霧吹は葵を抱えたままそそくさと車に乗り込み、次郎は散乱した食材を袋に投げ込み車に無造作に積み、組長は我関せずとばかりに相変わらず下手な歌を歌っている。
外野はびっくりして目ん玉をひんむいていたが、誰一人声をかけられる者はいなかった。
もちろん、さっさと引き返したアブナイ車三台は、しばらく無灯火で走り、外野に分からないように、ナンバープレートをかしゃりとローリングさせたことは言うまでもない。

