ポスっと何かに抱き抱えられる前に、黒い車の中から走って出て来た白いナイトがいることを葵は薄れる意識の中で確認していた。
『ほら! やっぱりちゃーんとナイトっているんだ』
もやもやとした意識の中で、自分を抱きかかえてくれた真っ白い服を着た素敵なナイトを見た……ような気がした。
白馬に乗っていないのが残念だけど、それはおとぎの国から来たナイトじゃなくて、現実世界に存在する黒い車から出て来た、現実の白い(たぶん)ナイト。
そんなナイトなんて言葉が似つかわしくないお下品な白いスーツに身を包んだヤクザな男なんだが、ちゃっちゃとボイコットさせろ! と願う意識の影響下ではかっこよく見えてしまったのだろう。
違った意味でのナイチンゲール症候群だ。
『迎えにきてくれたんだぁ。待ってた甲斐があった。霧吹さんじゃないのは残念だけど、このナイトはきっと私を守ってくれるんだ。霧吹さん、さようならー』
にんまりする葵は、待ち望んでいたナイトが自分の待ち望んでいたいかがわしい霧吹だったということを知ることになる前に、計画通に意識を切り離した。

