見たことがある、この車。はねられた時の記憶が走馬燈のように蘇った。
黒塗りの車。頑張って最大限に努力をしてみても、友好的とは呼べない車。その運転席にいる怖い顔の人。それって……
「次郎さん?」
葵の眉間に皺が、ぅわっしゃと寄った。
次郎は、やっちまった! という顔をしていた。
その奥に見覚えのある顔。
運転席と後ろを隔てるウィンドウが全開になているそこに見えた顔は……
「霧吹さん」だね。
霧吹は葵を既にその目に捉えている。
睨むような目を葵に向けて、しかし、口元には意地悪そうな笑みを讃えていた。いつも通りに。

