3台のゾロ目の黒塗りが、夜の街をぷーーーーーーっと通り抜ける。
街ゆく人々がなぜその光景に目を止めるのかと言ったら、お近づきになりたくない車ナンバー1だからだ。
車の行き先は、もちろん『スナック 赤パンツ』だ。霧吹は約束通り、帰ってきてからその日のうちにママに連絡を入れていた。ママは涙声で『いつでもおいで』と暖かい言葉を送った。
巣鴨へ向けて、霧吹の車には組長と霧吹と次郎、修の車には野兎組長と修、犬山の車にはあなたのと犬山が別れて乗った。
カラオケの練習をしながら向かう組長二人に対し、あなたのと犬山は、金の話で盛り上がっている。霧吹は長い足を組み、大声で歌う親父を無視し、目を閉じてじっと音痴な歌声に耐えていた。
修はスモークの貼られた窓から見えぬ外を眺めていた。
子供のころから慣れ親しんだ巣鴨の裏。
またこうしてみんなで来られたってことは奇跡だ。と、死にそうな経験をした若い二人は身をもって実感していた。自分たちの親父の背中や胸、腕には同じような消えないお絵かきが施されている。
更には『ああ、腕は上がらねえ仕組みになってんだよ』と笑った霧吹組長はその昔、抗争のさなかに腕を撃ち抜かれてそれ以降なかなかうまく腕が上がらなくなっていた。
俺も親父なんかと同じような経験をしてきたんだなあと思う霧吹は少しばかりでかくなった気がして、負けたことは負けたけれどプラスになる負け方をしたなと感じていた。

