放課後、HRが終わり教室から出ると、梶君と鉢合わせになった。

向こうは男子たちと一緒だったけれど、私に気付くと「おう」と手をあげてあいさつをしてくれた。

「梶の彼女?」

そう言う男子の脇を軽く小突き、梶君は「小学校の同級生」と言った。

「梶君これから部活?」

私が訊ねると、彼は「帰るとこ」と言った。

まだ1年生は部活がないらしい。

私は「そっか」と呟きそのままその場を去ろうとした。


「方面同じだし、一緒に帰るか?」

背中にそんな言葉をかけられなければ、私は逃げるように家へともどっていたと思う。

私が返事に困っているのをお構いなしに、梶君は一緒にいた男子たちに
「風野一緒でもいいよな?」と同意を求める。

男子たちは女子が混ざるということに「もちろん」と即答した。




「風野さんってどこ中出身なの?」

梶君と先ほどクラブハウスで知り合ったらしい浅井君が、率先して話題を振ってくる。

「城下女学院ってところ。」

私が答えると、他の男子たちも振り返る。

「城下って超頭いいとこじゃん。
何でうちの高校入ったの!?」

その質問に答えにくかったものの、クラスメートたちのような悪意が彼らにないことは分かっていた。

「勉強についていけなくなったから…。」

苦笑いしながら私が答えると、みんな納得してくれた。

クラスの人達にもこの言い訳を使えばよかったと、今さらながらに思った。




家が近付いてくると、浅井君たちと別れ、梶君と2人きりになった。

とたんに会話はなくなり、なんとなく気まずい空気が流れる。

よくよく考えたら、私たちは小学生の時特に仲がいいわけでもなかった。

梶君も沈黙が気になるのか、時々私の顔を盗み見る。

「浅いが変なこと聞いてごめんな。」

不意に言われた。

私は慌てて顔を上げて、「なんのこと?」と首を傾げる。

「どうしてうちの高校に来たかってやつ…」

梶君は昼休みからの数時間で私の噂を聞いたのか、私から視線をそらしながら小声で言った。

「気にしてないよ。」

私も小声で返した。