「ナツがいい」

「……ヒメ、」

「ナツがいいもん……!!」



…ー時々。

ヒメはこうやって、呪文のように唱える。

俺は、ヒメの力になりたいと思っていたし、ヒメを安心させられることにすごく優越感があったし。

別に、初めはこんなの、苦に思ってなかったんだけどな。



「どこにも……、どこにも行かないで、ナツ……」



「…俺、ちゃんといるよ」




ヒメが、こうやって

俺をまるで逃がしはしないと、捕まえるように言うもんだから…


本当に、たまに、不安になる。

 

「俺は、どんなヒメだって好きだよ」



本当だよ。本当に。

どんなんでも、どんなヒメだって。

ヒメに、どんな秘密があったって。



俺がヒメを好きなのには、変わりない。