ベッドの上で一向に起きる気配がしない、彩希。
「死ぬなんて俺が許してないだろ!」
……なんて愛翔が叫んでる。
みんなが泣き崩れるなか、
俺だけ泣かなかった。
……彩希は泣かれるのが嫌いだから。
「……!」
彩希の瞳から一筋の涙が流れた。
……湊さんに会えたのか。
直感的にそう感じた。
「幸せそーじゃん」
「…は?稜なに言ってんの?」
みんなが俺を睨む。
……おばさん以外。
喧嘩を売るような発言をしたから仕方がない。
「…湊さんに会えたんだよ、彩希は。」
「…お前っ!」
「やめて、愛くん」
「おばさん!!」
「彩希が涙を流して笑っているわ」
…彩希はそっちにいた方が幸せか?
“そっちにいたい?”
と質問を投げ掛けたって彩希からの返事は聞けない。
「彩希…幸せなら」
無理して戻って来なくてもいい。
でも、戻りたい。
戻って来ないなら、
俺は探しになんて行きたくなかった。
あのまんま寝ていたかった。
風呂場で彩希が手から血を流してる光景を見なくてすんだんだから。
…戻る気あんなら……
「死ぬ気で戻ってこいよ!!!」
気づいたら彩希にそう叫んでいた。
バカだよなぁ、俺も。
つくづく思うよ。
振り向かないなんてわかっているのに、
まだ諦めきれてねぇ。
彩希が誰かと愛し合おうがもう関係ねぇのに、俺がそれを許せない。
だからって女を抱くのもどうかしてるよな。

