「…き!彩希!」
「…んっ」
ここは……?
「ここは夢の中。彩希、ここに来ちゃ行けないよ」
「せ…んぱ…!」
「戻れ、彩希」
「いや…だよ!どうして!?」
「彩希はこれからも笑っていないとダメだ。」
「先輩が居ないのに…どうやって笑えばいいのぉ…!」
どうやって笑えばいいの?
教えてよ。
どうすれば笑えるの?
「…彩希」
「あたしはっ……先輩が居ないと…だめなのぉっ!」
先輩が居ないと笑うことさえ忘れて。
いつの間にか……笑いかたさえも思い出せなくなった。
何が面白いの?
どうして笑えるの?
気づけばこの質問ばかり浮かんで。
最後に笑ったのはまだ先輩が生きていた頃だね。
何もかもが楽しくて、嬉しくて。
気づけばいつも笑っていたね。
でもそれは先輩が居たから。
今は居ないじゃない。
なのに“笑え”って言うの?
…わかってるんだよ。
みんながあたしに“笑って欲しい”と願っていることも、
あたしが笑うから“話を聞こう”と思ってることも。
あたしだって笑いたい。
だけど笑えないの……。
あの頃みたいに無邪気に、
楽しくて笑う、
嬉しくて笑うなんて出来ないの………。
ううん、出来なくなったの方が合ってるかな……。
「…笑え…ないか…」
悲しそうに呟いた先輩。
そう、
笑えないの。

