「彩希ーっ」
「桃」
「…一緒に帰ろ?」
「…うん、帰ろ」
笑わないけど、
1歩ずつ前へ進んで行けてる彩希。
「お迎え」
「…翔貴にぃ、莢姉」
「彩希帰ろー?」
莢も張り合いがいなくて寂しそう。
湊さんの存在は俺達の中でも大きくて。
湊さんがいないっていう現実をまだ受け止めきれてない。
「…あ」
「どした?」
「…今日は先輩の誕生日なの」
「「「「……」」」」
何も言えなかった。
彩希が笑顔だから。
その笑顔を潰したくはないから。
「何がいいかなー?ピアス?」
「さ…き…」
「あ、それとも時計?」
「…さ…」
「でもこのネックレス先輩似合いそう!」
「彩希っ!!」
「何、桃」
「…あ…その…」
聞いていたく無かった。
でもいざ止めても、
彩希から笑顔が消えるのは容易にわかるから。
言えない。
「…ピアスがいいんじゃないかな」
「ピアスー?」
「…うん、彩希も付けて…さ…」
彩希から笑顔を奪うような行動はしたくない。
「みんなどうして泣いてるの?」
涙が止まらない。
彩希は純粋に心から湊さんを愛していたのに。
彩希はその返事を聞くことは出来ないんだ。