もう3月。


「翔貴先輩っ」

「湊先輩っ」



あちこちで2人を呼ぶ声が聞こえる。

やっぱモテるね、先輩と翔貴にぃは。




「…ごめんね?俺彩希ちゃんが好きだから、彩希ちゃんにしかボタンはあげない」


先輩っ//!?

てか、もうボタンの予約ですか!?

でももう……そんな時期だよね。



「なぁーに暗い顔してんの」

「…先輩」


先輩は明るくて、

可愛くて、

かっこよくて、

爽やか。


……先輩が居なくなるんだ。



「彩希ちゃん!?」

「…桜が散っちゃいます」


涙が出ちゃう。

先輩に助けられてきた。

先輩は“好き”って何度も言ってくれた。



なのにあたしは、

何一つ返せてない。

気持ちに応えられないくせに、

先輩が“卒業”することを寂しがってる……。

嫌だって思ってる。



「桜が散っちゃやだ」

「…うん、俺も」


そう言って隣に座った先輩。


「先輩が…いなくなっちゃう」

「…うん」

「そんなのやだ……」


わがままだってわかってる。

傷つけてるのもわかってる。


……でも嫌だ。



「彩希ちゃんを1人にするのは俺だって心苦しいよ」

「…先輩…」

「でも仕方ないよね。…春が終んなきゃ夏来ないし」

「…っ」


春が終わって、夏が来て。

夏が終わって、秋が来て。

秋が終わって、冬が来て。

冬が終わって、春が来て。


この繰り返し。


「…夏好きでしょ?」

「うん」


でも、夏よりも、

先輩の方が好き。

春が1番嫌いだよ。