「…は?嘘はやめろよ」

「嘘なんかじゃねぇ!…俺が彩希を好きだって気づいたから」

「……っ」




やめろ……よ……。

なんで彩希なんだよ?

俺の気持ち知ってて……。



「彩希は俺が……」

「翔貴にぃっ!!」



聞きたくないと言わんばかりに、

彩希が言葉を遮った。




「…だめだよ」

「え?」

「あんなに思い合ってたのに!!」

「それはお前らもだろ?」

「………え?」

「お前らだって思い合ってた。でも別れたじゃねぇか」

「…!」

「記憶喪失になっても一途に思ってた癖に。」

「…っ」

「記憶が戻った途端こうかよ?…稜もだ」

「……」

「ダメだってわかってんのに、菫んとこに行った」

「……!」

「お前らこそなんなんだよっ!」



兄貴の言う通りだ。

わかっていた。


“行ってはいけない”と。

でも止めらんなくて、

彩希に嘘までついて菫に会いに行った。

今思えば、なぜ会いたかったのかすらわからない。


“ヤりたかった”のか、

“ケリをつけたかった”のか……。


どっちにしても、

彩希を不安にさせるのはわかっていたはず…。


やっぱり俺は……バカだ。