悪い冗談はやめてくれよ。
“あたしと稜の関係ってなんなのかな?”
――付き合ってるだろ?
“浮気するほどつまんなかった?”
――刺激的だった。
“愛想つかした?”
――尽かすわけがない。
でも俺はそれを言えなくて。
「恋をしたら幸せなんて…ありえない…」
俺は………
最愛の彼女にこんなことを言わすほど、
彼女を苦しめてばかりだったんだ。
「彩希……彩希……!」
「稜…」
彩希を抱き締めれば、
俺の腕の中にいるのを確かめるかのように、
名前を呼んでしまう。
「…稜大丈夫よ」
今彩希を引き留めたら…、
きっと彩希はここに……、
隣にいてくれる。
だけどそれは………、
“好き”だから?
違うんじゃないだろうか。
今彩希を引き留めたって無駄なんだ。