「彩希…」


なんで泣くんだ。

夢の中でも悲しんでいるのか?




稜なんかに恋しなきゃ良かったのにな。




――ガタンっ……ドンドン……



あー、戻ってきた。


事の元凶が。




「あれっ!?」

自分の部屋にいるわけねぇーじゃん。

彩希が悲しむ男の部屋なんかに誰が居させるか。



――バンッ


「静かに開けろよ、彩希が起きんだろ」

「!?」


俺の部屋で、

俺のベッドで寝てる彩希に稜はびっくりしてる。



「な…んで?」

「俺が連れてきた」

「兄貴が…?」

「彩希の意思じゃない」

「だよな…」

「…俺が彩希を奪う」

「は!?」

「愛翔も湊も奪えねぇなら俺が奪う」

「意味わかんねぇし」

「お前なんかといっから彩希がいつまでも幸せになれねぇんだよ」

「あげねぇーよ」

「彩希がお前にいつ愛想尽かすかだよな」

「…!」

「そんなお前を彩希は好きになったんじゃねぇ」

「…だから」

「出てけ。」

「彩希…」

「俺が預かる」

「俺の!」

「うっせんだよ!お前が菫んとこ行くからだろ!?ふざけんじゃねぇ!」

「…っ!」



無理やり外へ追いやった俺。