稜side


実は俺、思い出したんだ。

全部――………。


でもそれを彩希に言えずにいた。



「もう愛のないえっちはしたくないの」



“愛のない”……か。

そう見えたのかもしれない。

彩希を“彩希”って呼ばなかったし、

冷たかったし、

無理やりキスをしたり………。


散々彩希を傷つけてきたんだから、

そう思われても仕方ないと思ってる。


「…はぁ」


一緒のベッドで寝ている俺たち。

手も出せなきゃ、

彩希に触れることさえ許されない……。


拷問すぎる………。





「稜?おやすみなさい」

「…あぁ、おやすみ」

「……?」



やっぱりもう……、

あの頃みたいに俺は出来ないような気がするんだ。


彩希をたくさん泣かせて、

他の女抱いて………。



もう元に戻れない事ばかりやった……。


それでもきっと彩希は、

“大丈夫”とか“気にしてないよ”

って言うだろう。


だけど…………、



それが俺には辛い。


結果的に、彩希を泣かせてきたんだ。


“大丈夫”なわけないんだよ…。