翔貴side 「桃と自由になって」 もう、 莢は、 俺がいなくても、 大丈夫になってたんだな。 いつの間にか莢の隣にいるのが当たり前になってた。 だけど、 やっぱり、 “ドキドキ”しなくて。 「桃ーっこっち!」 「待ってよ、彩希!」 やっぱり、 桃を目で追ってしまう。 「ばいばい」 きっと俺は、 気づかない間にたくさん、 莢を傷つけてきた。 潮時だよな。 俺も莢も、 さよならが必要になったんだ。 「じゃあな」 瞳に涙が溜まってて、 でもその涙を俺はもう、 拭えない――…………。