もしも願いが叶うなら


「あたしに狂わされない翔貴なんか願い下げ」



まぁ、狂わないのが普通よね。



「翔貴」

「ん?」

「あたしね、翔貴のその笑顔が好きだよ」

「うん」

「翔貴の温かい腕の中は安心出来る」

「うん」

「優しいキスが好き」

「うん」



でも翔貴は、

あたしじゃなくて、

桃にしなくちゃいけない。


「翔貴は……」

「……」

「もう桃と自由になって」

「!」


あたしという、

“鎖”

から解放されて。



ごめんね、縛り付けて。




「翔貴大好き“だった”よ」

「あぁ、俺も」



優しい翔貴は、

決してあたしを責めたりしない。

自己中でわがままなあたしを、

そのまま受け止めてくれる。



「ばいばい」

「じゃあな」




さようなら。


あたしの止まったままの、

“幼き心”

は今、“大人”になろうと成長する。