塔の中の魔女


正門の大廊下の半分ほどの広さの回廊が続いていて、左右に部屋がある。

扉を閉め、エカテリーナはその回廊を歩き始めた。


以前の宮殿とは様式も正殿や客殿の広さがまるで違う。

どこをどう進めばいいのかわからなかったが、探険するような軽い気持ちで回廊を歩く。

何度目かの突き当たりを右に折れて、エカテリーナは歩みを止めた。


そろそろ見飽きた回廊とは違う、開けた場所に出たのだ。


そこは深紅の天鵞絨を広げたような、八重咲きの花弁が甘く香る薔薇の園だった。

大振りの蕾が花開く瞬間を待ちわびるように、大輪の陰でひっそりと茎を伸ばしている。

すべて同じ品種なのだろう、華やかな緋一色。


美しく手入れされたそれは蜜を求める蜂のように、エカテリーナの手を誘う。