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エカテリーナは天蓋つきの寝台から身を起こす。
長旅の疲れが溜まっていたため、夢も見ずに眠ってしまった。
瞼を開ける頃には身体もスッキリしていて、
大きく伸びをした彼女は、サイドテーブルの上に真新しい絹の着替えが丁寧にたたまれていることに気づいた。
天蓋から広がる白絹の帳(とばり)を掻き分けて、
着替えを手にとったエカテリーナは、素早く身繕いを整えた。
貴族の娘が身につける華やいだ純白のドレス。
エカテリーナの容姿に相応しい愛らしいものだが、いささか装飾過多でもある。
繊細なレース編みの袖や裾、ふわりと膨らんだスカートには真珠が散りばめられていて重い。
「ふう……。着替えるかの」
エカテリーナは杖を振るい、魔法によって魔導着を取りだした。


