塔の中の魔女


「またちびなどと!」


と文句を言いながら、

エカテリーナはロゼリンの膝を魔法の杖で叩く。

ロゼリンが叩かれた痛みで微かに顔を歪めると、

ラッツェルがふたりの様子をつぶさに観察しながら口を開いた。


「あの、陛下?
こちらのお嬢さまは――」


「噂の魔女どのだ」


ロゼリンのあっさりとした答えに、ラッツェルは首を傾げた。


「噂の?
五百年塔に幽閉されていたという、あの?
ですが……」


ラッツェルの口調には、主君の言動が冗談なのか、

そうでなければどういうことなのかと、迷いが見てとれた。

だからエカテリーナは口を挟んだ。


「そうじゃ、わらわが塔から来た魔女の婆さんじゃ」


エカテリーナの愛らしくも高い幼女の言葉に目の前の青年は言葉を失い、

傍らのロゼリンは、


「それ、まだ根に持ってたのか」


と、盛大に顔をしかめた。