黒くくすんだ石をうず高く積みあげた薄暗い塔を見あげる。

今にも崩れ落ちそうな廃墟じみたそれに、我知らずエカテリーナは杖を握っていた。

瓦礫が落ちてこないよう、強化魔法をかける。

自分は生涯をかけて償わなくてはならないはずなのに、

塔の下敷きになってあっさりと死んでいくのは許されないと思ったからだ。

そして、塔を棲みかにしていた一匹の小さな蝙蝠を媒体にして、自らに呪いをかけた。

この枯れはてた大地がエカテリーナを決して出さぬよう。

強固な牢としての力を発揮するよう。


エカテリーナは様々な魔導書をかき集め、魔法の勉学に勤しんだ。

基礎や応用はもちろん、古代から連なる忘れ去られたものや、強大な兵器にも匹敵する魔法。

攻撃や守りによって違う陣の描き方や、術式の簡略化など、

魔法学者たちが研究し尽くしたものを頭に叩き込んで、日々を暮らす。


自らのしでかした反省を元に。