「ちび!」


「愚か者!
その呼び方を今すぐあらためよ!」


エカテリーナの身体から稲妻のような魔力が迸る。

無意識に抑えていた魔力が、ロゼリンの余計な一言に滲み出た怒気だった。


落ちていく黒い竜の身体に、閃光が走る。

それは竜の腹の中を反射して無数の稲妻を走らせた。

白や青、黄色といった様々な光に包まれながら、

エカテリーナはロゼリンの逞しい身体にすっぽりと包まれた。

腕を伸ばしたロゼリンが、落ちてきたエカテリーナを引き寄せて抱きしめたのだ。


「…………そなた、なにをしておるのじゃ」


「守ってる、つもり?」


はぁ、とエカテリーナは呆れたようにため息を漏らした。

僅かに頭を動かすと、エカテリーナの目の前には深い闇の沼が迫っている。

もうじき死ぬというのに、守るというのもあるまいに。