「小僧!」
エカテリーナが慌ててロゼリンの服を掴むと、彼は軽く頭を振って手綱を握り直す。
「大丈夫、――っ!」
ロゼリンの手が血で滑って、手綱を掴み損ねた。
体勢を崩した身体の上を、無数の蝙蝠が矢のように突進してくる。
ロゼリンの身体が空に投げ出された。
「小僧、……ロゼリン!」
エカテリーナが手を伸ばす。
けれど、小さなその手は虚しく空を掴むばかりだった。
旋回してとぐろを巻いた竜が、地を徘徊して頭をあげる。
その先にロゼリンがいた。
大きく開いた竜の口がロゼリンを飲み込んでいく。
エカテリーナは考えるより先に行動していた。
馬の背を蹴って、飛び降りたのだ。
そのまま、落ちていくロゼリンを追いかけた。