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ロゼリンの剣は迷いなく目の前のものを斬り捨てる。
さすがに王を名乗るだけあって、空っぽなその頭とは違い、標的を仕留める動きに無駄がない。
しなやかで、馬上での戦いに慣れているのかと思えるほどだ。
しかし、エカテリーナの呪いによって生まれた蝙蝠の群れは、あまりにも多く、
無数の矢の中で戦うようなもので疲労ばかりが蓄積していく。
ロゼリンの喉が荒い息を継ぐのを見て、エカテリーナは臍を噛んだ。
せめて自分の魔法があれに効けばよいのにと。
呪いはエカテリーナの魔力を吸収し、反射魔法となって返ってくる。
初めの詠唱でそれを知ってから、エカテリーナは魔法による攻撃を控えていた。
下手に魔法を使えば、ロゼリンの邪魔をするとわかっていたからだ。
けれど、切れ間のない蝙蝠の突進は終わりがなく、ロゼリンの命を悪戯に削るばかりで。
くらりとロゼリンの身体が傾いだ。


