塔の中の魔女


ふわりと身体が浮いたのは一瞬――。


「――っと、あぶないな。
ちゃんと馬にしがみついてろ」


ロゼリンの焦った声とともに、強い力で引き戻された。


「そなた――」


「絶対に落っこちるなよ。
今から、支えてられなくなるんだから」


「それはどういう――」


呆然とするエカテリーナの前で、ロゼリンがすらりと剣を抜くのが見えた。

紅の瞳が信じられないものを目にして、見開かれる。


「そなた、なにをしておるのじゃ?」


「しつこいから倒す」


「無理じゃ!
あれは呪いによって生まれ出でたもの。
ただのなまくらの剣で斬れるものではない」


「舌噛むぞ」


「いいから聞け!」


後方を振り返って剣を構えるロゼリンに、しがみついて首を絞める。