「マギ・プロテ(盾よ)!」
ドドドドッ――と、
凄まじい衝撃音とともに、なにもない空間に蝙蝠の頭が突き刺さり、
ボトボトと地に落ちていく。
進路を変えた馬が勢いよく駆け出して、背後の群れとの距離が僅かに離れた。
それに気を緩める間もなく、再び足元に広がる沼に行く手を阻まれた。
「くそっ、こっちもか!」
ロゼリンが馬首を巡らせて、方向を変える。
魔法で障壁を作り出した杖の先をじっと見つめて、
エカテリーナがぽつりと呟いた。
「無駄じゃ」
ロゼリンが眉をあげた。
「この呪いは、わらわを結界から出さぬためのもの。
わらわが作り出した結界ゆえ、わらわの魔法は効かぬし、
わらわの前では大地は地震や底無しの沼といった様々な形の牢獄となり変わる。
あれも死ぬまで追ってこよう」
そう言って指し示す先には、鉤爪のついた翼をばたつかせて地から這いあがる蝙蝠の群れ。
それが再び、竜の形をとってふたりを見た。


